RTK高精度測位サービス
RTK対応の機器をご利用いただくにあたり、以下のご準備が必要となります。
① RTK高精度測位サービスへの加入契約(GNSS衛星補正サービス)
・ご契約先の例:ALES、ソフトバンク、NTTドコモ、KDDI など
・料金目安:月額プラン約3,000円/月、または年額プラン(数万円程度)
② 通信環境のご準備(プリペイドSIMカードまたはWi-Fi)
・データ通信が可能なプリペイドSIMカード、または安定したWi-Fi環境をご用意ください
・推奨SIMカード:180~360日有効、データ容量 10GB程度
・参考価格:HISモバイル 180日・10GB プラン 約2,300円~
※お申込みからご利用開始までに、約10日ほどかかります。
RTK高精度測位サービスとは
RTKとは「リアルタイム・キネマティック、Real Time Kinematic」の略で、GNSS (全球測位衛星システム、Global Navigation Satellite System、GPSなど)を使った高精度測位技術です。衛星測位システム(GNSS)を用いて、高い精度で位置情報を取得する測位技術です。数センチメートル単位の精度で位置を測定できるため、ドローン測量、自動運転、農業機械の自動操縦などに使われています。
RTKの基本的な仕組み
RTKは以下のような構成で動作します:
基準局(Base Station)
・位置が正確にわかっているGNSS受信機。
・実際に受信したGNSS信号と理論的に計算される信号のズレ(誤差)を算出。
・この誤差情報を「補正データ」として送信する。
移動局(Rover)
・実際に位置を測定したいGNSS受信機(たとえばドローンやロボットなどに搭載)。
・GNSS信号と基準局から送られてくる補正データを利用し、自分の正確な位置をリアルタイムで計算する。
基準局が受信した衛星信号と、その差分情報をリアルタイムで移動局に送信し、移動局はそれをもとに誤差を補正して、cmレベルの精度で位置を特定します。
特徴とメリット
・誤差補正:衛星信号の遅延などによる誤差を補正できる。
・高精度:数センチ単位、場合によってはミリ単位の精度が得られる。
・リアルタイム:測位結果がリアルタイムで得られるため、自動運転やドローン、農業機械などの即時制御に最適。
RTK測位は、大きく分けて基地局RTKモード(単一基準局RTK)とネットワークRTKモードの2つの主要な運用モードに分類されます。以下でそれぞれの特徴を簡潔に説明します。
●基地局RTKモード(単一基準局RTK)
1つの固定された基準局(Base Station)と移動局(Rover)を使って測位を行うモード。基準局は既知の位置に設置され、衛星信号の補正データを移動局にリアルタイムで送信します。

◎特徴:
・距離依存:基準局と移動局の距離が近いほど精度が高い(通常10~20km以内が理想)。距離が離れると、大気誤差(電離層や対流圏の影響)が増加し、精度が低下。
・通信:補正データは無線(UHF、VHF)、Bluetooth、またはインターネット(Ntripなど)で送信。
・セットアップ:ユーザーが自分で基準局を設置するか、既存の基準局(例:国土地理院の電子基準点)を利用。
◎メリット:
・シンプルで、ネットワークインフラが不要な場合も運用可能。
・ローカルな作業(例:小規模測量)に適している。
◎デメリット:
・基準局から遠ざかると精度が低下。
・基地局の設置や管理が必要となるため、初期投資が大きくなります。
使用例:地域限定の測量、農業機械の自動化、ドローンの精密制御など。
●ネットワークRTKモード
複数の基準局をネットワーク化し、それらのデータを統合して補正情報を生成するモード。移動局はネットワークから補正データを受信し、広範囲で高精度な測位を行います。

◎特徴:
・広範囲対応:複数の基準局のデータを活用することで、基準局から遠くても精度を維持(数十~数百kmカバー可能)。
・補正方式:
・VRS(Virtual Reference Station):移動局の位置に基づき、仮想的な基準局を生成して補正データを提供。
・FKP(Flächenkorrekturparameter):エリア全体の誤差モデルを送信。
・MAC(Master-Auxiliary Concept):主基準局と補助基準局のデータを組み合わせて補正。
◎通信:通常、インターネット経由でNtripプロトコルを使って補正データを配信。
◎メリット:
・広範囲で一貫した高精度(センチメートル級)を確保。
・ユーザーが基準局を設置する必要がない(既存のネットワークを利用)。
・大規模プロジェクトや移動範囲の広い用途に最適。
◎デメリット:
・インターネット接続とサービス契約が必要です。
・地域によってはネットワーク環境により利用が難しい場合があります。
・サービス利用にコストがかかる場合がある。
使用例:
大規模測量(都市計画、道路建設)、自動運転車、精密農業(広域農場)、ドローン測量など。
代表的なRTK測位サービス会社のご紹介(日本国内)
日本国内には多数のRTK測位サービス提供会社がありますが、一般的によく知られている主要な企業をいくつかご紹介します。
ALES(ALES配信システム)個人向け
ALES株式会社が提供する「ALES配信システム」は、ソフトバンク株式会社が全国に展開する独自基準点が受信した信号をもとに、補正情報を生成し、GNSS受信機(移動局)を搭載した農業機械、建設機械、自動運転車、ドローンなどに配信するサービスです。この補正情報とGNSS受信機が受信する衛星信号を組み合わせてRTK測位を行うことで、リアルタイムで誤差数cmという高精度な測位を実現します。
ソフトバンクの独自基準点は全国に3,300カ所以上設置されており、ユーザーが自ら基準点を設置する必要がありません。これにより、全国で高精度な測位が可能であり、冗長性も確保されています。さらに、高密度に配備された基準点により、安定した測位やスムーズなハンドオーバー(※)が短時間で行えるため、長距離の移動でも精度の高い測位を継続できます。
※ハンドオーバー:GNSS受信機(移動局)の移動に応じて、最適な独自基準点に自動的に切り替わること。
主な対象分野:農業、ドローン、スポーツ、インフラ
NTTドコモ(docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス)法人向け・個人向け
docomo IoT高精度GNSS位置情報サービスは、GNSS(全球測位衛星システム)からの測位情報に、国土地理院の電子基準点に加えてドコモ独自の基準点を活用して補正を行い、誤差数センチメートルの高精度な位置情報を提供するサービスです。全国に設置された国土地理院の電子基準点に加え、カバーエリアの密度を高めるため、ドコモ独自の基準点を整備。これにより、全国の広範囲で安定した高精度測位が可能です。
さらに、測位対象の機器が移動した場合でも、最寄りの基準点から自動的に補正情報が配信されるため、常に高精度な測位を維持できます。
主な対象分野:建設、農業、運輸、ドローン、インフラ
ソフトバンク(ichimill)法人向け
ichimillは、高精度なRTK測位を提供するサービスです。
準天頂衛星「みちびき」をはじめとするGNSS(全球測位衛星システム)からの信号に加え、ネットワーク経由で配信される「補正情報」を活用することで、リアルタイムで誤差数センチメートルの高精度測位を実現します。通常のGNSS(GPS)では誤差が5〜10メートル程度ありますが、ichimillではRTK測位によって、これを大幅に低減可能です。
ソフトバンクは、自社の基地局に独自の固定基準点を全国3,300ヵ所以上設置しており、ユーザーは自ら基準点を用意することなく、すぐに高精度な測位を利用できます。
主な対象分野:農業、建設、ドローン、スポーツ、インフラ
KDDI(KDDI 高精度位置測位サービス)法人向け
KDDI高精度位置測位サービス(PPP-RTK)は、RTK方式の即時性と、PPP方式の基準局に依存しない特長を兼ね備えた、高精度な測位サービスです。
KDDIが独自に設置した高信頼な基準局のデータをもとに、Swift Navigation Inc.と連携して作成した補正情報を配信。これにより、多数・広域・高速な用途にも対応し、安定かつリーズナブルにご利用いただけます。
主な対象分野:ドローン、インフラ
ALES | NTTドコモ | ソフトバンク | KDDI | |
特徴 | ソフトバンク独自基準点、全国3,300カ所以上 | 国土地理院電子基準点(約1,300か所)+ドコモ独自基準点 | ソフトバンク独自基準点、全国3,300カ所以上 | 国土地理院電子基準点(約1,300か所) |
精度 | 数cm | 数cm | 数cm | 数cm~数十cm |
対応エリア | 全国 | 全国 | 全国 | 全国 |
想定用途 | 農業、ドローン、スポーツ、インフラ | 建設、農業、運輸、ドローン、インフラ | 農業、建設、ドローン、スポーツ、インフラ | ドローン、インフラ |
価格帯 | 年額プラン:39,600/年 事務手数料0円 月額プラン:3,300円/月 事務手数料6,000円 | 年額プラン:要問合せ 数万円/年(推定) 月額プラン:3,300円/月 | 要問合せ 数万円/年(推定) | 要問合せ 数万円/年(推定) |
RTK測位サービスご利用の流れ
- RTK測位サービス提供会社との契約
- ご利用には、RTK補正情報を配信するサービス提供会社との契約が必要です。
- 契約後、Ntripクライアントアプリケーションに設定する「接続先情報(ホスト名、ポート、ユーザーID、パスワード)」および「マウントポイント(Mount Point)」が提供されます。
- GNSS受信機・Ntripクライアントなど各機器の接続と起動
- GNSSアンテナ、受信機、Ntripクライアントアプリ(または対応機器)を接続し、電源をONにします。
- インターネットに接続
- 補正データを受信するため、Ntripクライアントがインターネットに接続されている必要があります。
- モバイルルーターやスマートフォンのテザリング、Wi-Fi等を使用してください。
- Ntripクライアントアプリケーションの設定
- 提供された接続先情報とマウントポイントを、Ntripクライアントに正確に入力します。
- 補正データの受信とRTK測位の開始
- 設定が完了すると、Ntripクライアントを通じてサービス提供元からRTK補正データの配信が始まります。
- GNSS受信機が補正情報を利用して、リアルタイムで高精度な位置情報を取得できるようになります。
NTRIP+インターネット接続
NTRIP(Networked Transport of RTCM via Internet Protocol)は、リアルタイムでGNSS補正データを配信するためのプロトコルで、農業、測量、自動運転などで高精度な位置情報を必要とする場面で広く使われています。NTRIPを利用する際、インターネット接続としてSIM(セルラーデータ)またはWi-Fiを使用する場合があります。それぞれの特徴を比較し、メリット・デメリットを以下に整理します。
1. 接続の仕組み
- NTRIP+SIM
- セルラーネットワーク(4G/5G)を利用してNTRIPキャスターに接続。
- GNSS受信機に内蔵されたモデムまたは外部のセルラールーターにSIMカードを挿入して使用
例:農場のトラクターやロボット芝刈機が移動中にセルラー経由で補正データを受信。
- NTRIP+Wi-Fi
- Wi-Fiホットスポット(スマートフォン、ポケットWi-Fi、固定ルーターなど)経由でインターネットに接続。
- GNSS受信機がWi-Fiネットワークに接続し、NTRIPキャスターから補正データを取得。
例:スマートフォンのテザリングや現場のWi-Fiルーターを利用。
2. 比較表
項目 | NTRIP+SIM | NTRIP+Wi-Fi |
接続範囲 | セルラー信号が届く範囲(都市部・郊外で広範囲) | Wi-Fi信号の範囲(通常数十m程度) |
モビリティ | 高い(移動中でも接続可能) | 制限あり(Wi-Fi範囲内にいる必要がある) |
信頼性 | セルラー信号の強さに依存(圏外だと接続不可) | Wi-Fi信号の安定性に依存(混雑や干渉で不安定) |
セットアップ | SIMカードの契約・設定が必要 | Wi-Fiデバイスの設定が比較的簡単 |
コスト | データプランに応じた費用(高額になる場合も) | Wi-Fi環境次第(無料の場合も、ポケットWi-Fiは有料) |
複数デバイス対応 | 単一デバイス向け(モデム依存) | Wi-Fiなら複数デバイスで共有可能 |
セキュリティ | セルラーは比較的安全 | 公共Wi-Fiはセキュリティリスクあり |
3. メリット・デメリット
NTRIP+SIM
- メリット
- 広範囲なカバレッジ:セルラー信号があれば、農場や遠隔地でも使用可能。移動中の車両(例: トラクター、ドローン)でも安定して接続。
- 独立性:Wi-Fiホットスポットや外部デバイスが不要で、GNSS受信機単体で動作可能。
- セキュリティ:セルラーネットワークは公共Wi-Fiより安全。
- デメリット
- 信号依存:セルラー圏外(山間部や僻地)では使用不可。
- セットアップの複雑さ:SIMカードの契約やAPN設定が必要で、初期設定がやや手間。
NTRIP+Wi-Fi
- メリット
- コスト効率:既存のWi-Fi環境(自宅、事務所、無料ホットスポット)を利用すれば追加費用が不要。ポケットWi-Fiでもデータ共有でコストを抑えられる場合がある。
- 簡単なセットアップ:Wi-Fiネットワークへの接続は一般的に直感的で、技術的な知識が少なくても設定可能。
- 複数デバイス対応:1つのWi-Fiホットスポットで複数のGNSS受信機やデバイスが補正データを共有可能。
- デメリット
- 範囲の制限:Wi-Fi信号の範囲(通常20-50m程度)に縛られるため、広範囲を移動する作業(例: 大規模農場でのトラクター作業)には不向き。
- 接続の不安定さ:Wi-Fiネットワークの混雑や干渉により、補正データの配信が途切れる可能性がある。特に公共Wi-Fiでは信頼性が低い。
- 追加デバイスの必要性:ポケットWi-Fiやスマートフォンのテザリングを使用する場合、充電や管理の手間が増える。
4. 使用場面に応じた選び方
NTRIP+SIMが適しているケース
- 広範囲での作業:農場、建設現場、測量など、広範囲を移動しながら高精度な位置情報が必要な場合。
- 遠隔地での使用:Wi-Fi環境が整っていない僻地や郊外での作業。
- 独立性を重視:追加デバイスを持ちたくない、またはシンプルなセットアップを求める場合。
使用例:トラクターの自動操舵システムで、セルラー経由でリアルタイム補正データを受信。
NTRIP+Wi-Fiが適しているケース
- 限定されたエリアでの作業:工場敷地内、都市部の測量、小規模農場など、Wi-Fi範囲内で作業が完結する場合。
- コストを抑えたい場合:既存のWi-Fi環境を利用できる、またはデータ共有で複数デバイスを低コストで運用したい場合。
- 一時的な使用:短期間のプロジェクトやテストで、ポケットWi-Fiやテザリングで十分な場合
使用例:都市部でのドローン測量で、現場にポケットWi-Fiを持ち込む。